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魔法少女まどか☆マギカ [新編] 叛逆の物語 感想 (多少ネタバレあり)

あまりの酷さに(良い意味で)、その子にそこまで酷いことやらせなくてもいいじゃん虚淵シャフト、と思ったのが第一印象だった。

 
具体的なストーリーはまず置いといて、これはもはや公式二次創作と言ってもいいと思う。フェイトステイナイトにおけるゼロみたいなもんだろと。
まどマギってのはストーリーもそうだがキャラクターの可愛さが人気になり、同人誌やらssやらで、キャラ同士のカップリングをメインとした話が大量に作られたり、「まどほむ」はなのか、いや「ほむまど」なのか、「杏さや」なのか「さや杏」なのか、とネット各地で議論が巻き起こったりした(僕はほむら好きだけどほむらがネコでもタチでもどっちでも構わない派です)。もちろんストーリーにおいても様々な妄想が繰り広げられて、まあオタ文化ってのは同人誌文化でもあるって東なんちゃらが言ってた気がするけど、ともかくそういうファンによる、キャラクターや設定を元にこねくり回した妄想を引き受けた上で新たに作られたのが、この「叛逆の物語*1」である。だからマミとマミを食った魔女が平気で仲良くしているし、杏子とさやかの感じも、まどかとほむらの感じも、確実に二次創作の影響を受けているし(特にほむらはそう)、そもそも冒頭の世界自体が、まどマギファンの妄想した完璧に幸せで理想的なテンプレ魔法少女世界になっていることが、影響をより強く感じる理由になっている。
加えて新房監督が「このあと続いていく物語にしたい」と虚淵さんに語ったのってつまり、二次創作されることを前提に、ファンがその後の物語をこねくり回してくれることを前提に作ったんじゃないかと勘ぐってしまう。単純に売れたら続編作れるようにと考えたのかもしれないけど、同人誌かいてほしい! と思って作った、ってことにした方が面白いよね。
 
それにしても、これだけアングラでアンハッピーな作品が日本で全国放映され、しかも10億突破なんて、すごい世界になったんだなあと思った。
冒頭で書いたとおり、この作品は確かに残酷なストーリーで、加えて劇団イヌカレー×シャフトの映像作品的な部分もある。テレビアニメまどか☆マギカと比べても、ポップな感じはない。明らかにアングラだしサブカルだ。ゆえにそこから「でも面白い、だから面白い」となるかどうかは人それぞれ違うだろう。
でも僕は面白いと思った。
 
欠点がないわけではない。シャフトも(アニメにしては)やり過ぎだしイヌカレーも(アニメにしては)やり過ぎだと思う。虚淵玄は残酷な脚本を書いたが前者二人に比べたらやりすぎというほどではない。むしろストーリーとしては非常にきちんとしている。
特に構成は、シャフトがまだ映画の尺に慣れてない感じがする。テレビ版まどマギに比べて明らかにヘタクソである。テンポが悪い。テレビアニメでは一話一話ちゃんと何を伝えたいのかという目的があったから気持ちよく見れた*2のが、今回の劇場版ではそれができてない。わざとやってないのかもしれないけど。何処の洋楽だってくらいイントロが長い。あんだけ変身シーンやら日常シーンに尺割かなくてもいいだろう、と。この作品の背景としてまず、胡散臭いほどの綺麗な魔法少女的日常を、丁寧過ぎるくらいに描いて、視聴者に見せたかった、という意図はわかるし、理解もできるが、納得はできない。
加えて、その日常にイヌカレーがものすごい表現でぶつかってきて、いやこれはもう「普通」を示したいのか「変」を示したいのかどっちなんだと、視聴者を混乱させる。*3あれは虚淵がと言うよりかは、シャフトとイヌカレーが膨らませたシーンだ。
虚淵玄をシャフトが調理しすぎて、それ以上にイヌカレーがめちゃめちゃに調理して、そのまま綺麗に整頓されずに一つの形になってる。鷲崎健的に言えば「個性同士がない混ぜになって、ちゃんとバランスの取れないまま皆様にお届け」されている、のが非常に面白くて、これこそサブカルだ、と思った。
 
皆が好き勝手やった個性豊かな表現を浴びたい、という人にオススメ。

*1:まどマギファンに対する反逆なのか、既存の「テレビアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』」に対する反逆なのか。

*2:全12話の構成は、各3話区切りで「マミ編(第1話-第3話)」「さやか編(第4話-第6話)」「杏子編(第7話-第9話)」「ほむら編(第10話-最終話)」と呼べるようなものとなっており[54][55][注 8]、それぞれのキャラクターの魅力が順番に描かれていくような構成となっている。(魔法少女まどか☆マギカ - Wikipediaより)

*3:あの世界がなぜシャフト空間とイヌカレー空間の混ざったものになっていたのか、一つ思いついたことがある。かつてのテレビアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』で、イヌカレー空間というのは主に魔女の世界のシーンで本領を発揮していた。映画の冒頭で魔法少女たちが暮らしていたあの世界は、魔女(になりかけたほむら)の世界だったわけだから、イヌカレー空間がテレビ版以上にそこかしこにあっても別段不思議ではない。