よし、「ターン」について語ろう。
ストーリー的に言えば、ツッコミどころは確かにある。ファンタジー過ぎやしないかという根本的な問題。「なぜかわからないけど」が多すぎる展開。けれど、読んでる時は面白いと感じていたのは事実である。なんだかんだ言って物語には引き込まれたし、特に母親が涙したシーンでは思わずグッときてしまった。
読み終えて初めに思ったのが、なんだか久し振りにゼロ年代というか平成文学っぽい文体に触れた気がする、ということ。自分が学生の時に読んでいた本のことを思い出した。小川洋子の「博士の愛した数式」とか、西加奈子の「さくら」とか。ああいうなんとも言えないやわらかい、ひらがな多めな文体に以前はたくさん触れていたのに、最近は太宰だとか谷崎だとか古めの文体ばかりに手を出していたので、凄く懐かしいなあと思った。懐かし過ぎて、むしろ新鮮に感じたくらいである。
で実際その文体が好きかどうかというのは、かつて学生時代に読んでいた頃は多分好きだったんだろうが、今の僕にとってはあんまり好みのものではない、とこれはこの前の記事でも書いたけれど。ただすらすら読めたのは確かだ。でもやっぱり好きではない。あえて言うなら、やはりこういう女性的な文体では、今僕の中でキテるというのもあってか、幸田文より素晴らしいものはないように思える。彼女のあの表現の奥ゆかしさは本当に素晴らしい。何より気取っていない。
彼女についてはいずれ書くかもしれないし、このまま書かないかもしれない。理由を考えるのが面倒臭いから。以前言ったように、僕は感情に理由を付けるのが得意ではないので・・・。