コーネリアスの『あなたがいるなら』を毎日聞いている。間違いなく毎日聴いている。坂本慎太郎はやはり天才だと思う。こんなにわかりやすい言葉でこんなに豊かなラブソングが作れるのか。
Cornelius - 『あなたがいるなら』"If You're Here"
http://www.utamap.com/showkasi.php?surl=k-170628-120
ラブソングで大事なのはいかに「好き」という言葉を使わずに愛を語るかだ。この曲は「何故あなたに対してこんな気持ちになるんだろう」とひたすら問うが、答えは絶対に言わない。
ただ 見てるだけで
なぜ わけもなく
切なく なるんだろう?
動くだけで なぜ
意味もなく どき どき してくるのだろう?
曲を聴いていると、この歌詞の主人公は、まるでついさっき「好き」の感情に気づいたみたいに思える。そのくらい純粋だ。なぜドキドキしてくるのか、何故切なくなるのか、わかっててそう言っているんだという解釈もあるだろうが、僕にはもっとピュアに聴こえる。
ほらね また だれか
きみの うわさ している
みんな きみを すきなんだ
あなたのことを好きな人はきっといる、あなたがいるだけで嬉しい人は必ずどこかに存在する、あなたの噂をしてる人がいるよ、きっとあなたのことを好きに違いない(もちろん「わたしもあなたのことが好きです」なんて無粋なことは言わない)。悪口を言ってるに違いないとか、あなたのことが嫌いだとか考えたりはしない。
この歌詞における「あなた」「きみ」は「僕」のこと、というかこの曲を聴いているあなたのことを指しているんじゃないかとも思える。だから聴いていると自分が洗われるような、存在を許されたような気持ちになる。何度も聴いてしまう。
あるいは他の解釈として、アイドルを応援しているファンの気持ちと考えることもできる。単純に片思いの歌としても解釈できる。カップルが相手のことを想う歌として捉えることもできる。というかこの曲、あらゆる解釈が可能なのだ。
星野源の『恋』が様々な性別、次元に対応した曲であったのと同様、この曲もそうである。むしろより抽象的である分『あなたがいるなら』の方がレンジは広いかもしれない。